ヴェルサイユ宮殿の始まりは、ルイ13世が建設した狩猟用の小城館です。ルイ13世在位中には、現在の大理石の中庭を「コの字」に取り囲む多少規模の大きな城館へと改築されました。
ルイ14世の時代になると建築家ルイ=ルヴォーが王命を受け、ルイ13世の城館を取り込む形で、外側に大きな「コの字」型の宮殿を増築します。写真で言うと赤線部分ですね。
更にルヴォーの死後、ルイ14世の命を受けたジュール=アルドヴァン=マンサールが写真の青の部分を建設、またテラスが設けられていた庭に面する部分に「鏡の間」を増築するなど本館の改装も行い、ほぼ現在の姿となりました。
とまあ、説明はこれくらいにしておいて先に進みましょう。先程スルーした正面向かって右の入り口から宮殿に再度入ります。
ここからは「礼拝堂の一階 → 歴史博物館 → 礼拝堂の二階 → 二階の王の居室 → 鏡の間 → 王の寝室 → 王妃の居室 → 戦闘の間」の順にまわります。
オペラや王妃の居室の内側の部屋は、あらかじめ予約が必要な専門ガイドが付くツアーで無いと見られないようです。
最初に目にするのは、一階からのヴェルサイユの礼拝所です。一階がアーチ、二階がコリント式列柱で独特な雰囲気です。
ここを通り過ぎれば、歴史博物館エリアです。ヴェルサイユの歴史が視覚的に理解出来るようになっていますので、言葉が分からなくてもそれなりに理解出来ました。
博物館エリアを過ぎると二階に上がる階段が有ります。そこからフランスの歴史的人物の彫像が飾られた回廊を通り、再び礼拝所に戻ります。ここに飾られているのは、ぱっと見たところ、ほとんどがルイ14世時代の人物です。
礼拝所の二階。ここには王の席が設けられ、特別なミサでは無い限り王が一階に降りることは無かったそうです。ここを過ぎると王の居室です。
いよいよ王の居室へと入ります。下の階のアパルトマンもそうでしたが、この時代には移動のための廊下が設けられていません。部屋を連ねる形で、移動するには隣の部屋を抜けて行かねばならない構造です。
各室にはその名に因んだ天井画が描かれています。
王の生活は公開され、王の居室への昼間の出入りは庶民であっても自由だったそうです。王はフランスそのもの、つまりはブルボン家が統合する領土そのもの、であり誰もが目の当たりにしうる存在であるべきであったのでしょう。
最初の部屋ヘラクレスの間は、先に見た礼拝所が完成する前には礼拝に使われていた部屋だそうです。フランソワ=ルモワンヌが描いたヘラクレスの天井画が描かれています。
豊穣の間は夜の軽食が提供された場所。ルイ14世の金銀のメダル・宝石のコレクションを保管した部屋です。
続くヴィーナスの間・ダイアナの間は、それぞれ、この先の王の居室の玄関・通路に当たる部屋。ヴィーナスの間には、夕べのレセプションのために果物などを並べたテーブルが置かれ、ダイアナの間にはルイ14世時代にはビリヤード台が置かれていたそうです。
元は衛兵の詰め所なので、軍神マルスの間。掛かっていた肖像画はルイ15世と妃マリー=レクザンスカ。
メルクリウスの間は、建築家マンサールによって移される以前の王の寝室です。ルイ14世の死後、その遺体を10日間安置した場所もここです。
アポロンの間は太陽神の名が示す通り、この居室群の中心で玉座が置かれていた間です。
戦闘の間を通り抜け、いよいよ鏡の間です。大きな鏡の製造が難しく、高価であった時期に造られたので、当時の人達はその豪勢さと鏡が造り出す空間の広がりに驚愕した事でしょう。
日本で世界史を学ぶ我々には普仏戦争後のドイツ皇帝即位式を描いた絵画で馴染み深いという、歴史の皮肉もあります。
この鏡の間に、王の寝室へ続く入り口があります。閣議の間はその名の通り、王が曜日毎に閣議を行った間。円窓の間は王に目通りを願う者の控えの間です。
王の寝室は、1701年からルイ14世の寝室として使用された部屋です。ルイ14世が1715年に息を引き取った場所もこの部屋だそうです。
王の寝室から鏡の間を経て、南翼へ行くとそこは王妃の居室です。歴代王妃の寝室であり、公開出産の場ともなりました。
1789年10月6日の「ヴェルサイユ行進」の夜、宮殿内に侵入した市民から逃れるためマリー=アントワネットが寝室から逃げ出したのは、ベッドの左側に見える小さな扉からだそう。
貴人の間は、ルイ15世妃マリー=レクザンスカが謁見の間として使っていた部屋。
グラン=クヴェールの間は、国王が公式晩餐を摂った部屋です。
日々を「起床の儀」から始まる儀式の連続で過ごしていたルイ14世は、夜22時からのこの儀式、公式晩餐もほぼ欠かさず行っていたようです。
この部屋では、王に招待された王族のみがテーブルに着くことを許されました。並べられたスツールには公爵夫人達が着席を許され、廷臣達は立って公式晩餐を見たそうです。ここまで生活が公開であると、聞いているだけで息が詰まってしまいそう。
この後は女王の衛兵の間と、ダヴィッドのナポレオン戴冠式の絵画が飾られている戴冠の間を経て、ルイ=フィリップが造らせた「戦闘の回廊」へ。
フランスの戦いに因む絵画や胸像の並ぶ、南側の部分二階です。まずはナポレオンの将軍達や、フランスの軍人の肖像画。
続く回廊には、フランスの行った戦争を題材とした絵画が並びます。ナポレオンの絵画はイエナやアウエルシュタット、マレンゴなどナポレオンが勝利した戦いです。フィリップ2世が皇帝オットー4世・英王ジョンに勝ったブーヴィーヌの戦いやアメリカ独立戦争を題材にした絵画も飾られていました。
この戦闘の回廊を見終えて階段を降り、また彫刻が並ぶ一階を戻れば順路は終わりです。この彫刻群は自国の歴史をフランク王国からと認識しているのがよく現れていて、面白かったですね。
ヴェルサイユ宮殿、とても興味深い場所ではありましたが「予約が必要な、ガイド付きツアーのみ」と言う非公開部分が多く残念でした。
また思ったほどに豪華さは感じませんでした。決して潤沢であったとは言いがたいルイ14世のフトコロ具合が建材の質に出ているのか、それとも革命を経て、調度などは新しく作り直したものであるからなのか。まあ、この辺りは将来、是非とも自分で訪れて感じてみてください。