出題ミスに関して-2020年度 センター 世界史B

大問1の問5

まずは引用してみましょう。

下線部5に関連して,制度や政策について述べた文として正しいものを,次の1~4より一つ選べ。

1.魏で屯田制が実施された。

2.ムガル帝国が,貴族に軍役と引き替えに土地を与えるプロノイア制を導入した。

3.ベルンシュタインが,プロイセンで農奴解放を行った。

4.ポルトガルで,アトリー政権が社会福祉制度を充実させた。

 

次は下線部を確認です。

4古代アテネのアクロポリスに建てられたパルテノン神殿は,その時々の5支配体制の下で姿を変えてきた。

何が誤りなのか

想定される正答は「1.魏で,屯田制が実施された。」です。

理由は既に述べましたので、参照していただけたらと思います。

 

ところが、この設問は「選択肢文中の魏について、三国時代ではなく戦国時代と考えた受験者が誤文と判断する可能性を考慮し」受験者全員に2点となりました。

確かに、世界史で学習する範囲で「魏」は戦国時代三国時代のふたつです。

無効にし全員に配点は妥当な判断である、と言えます。

ところが

実際には世界史で習う「南北朝の北魏」・習わない「五胡十六国の冉魏翟魏」なども正式には「」で、後の時代に区別しやすいようにそう呼んでいるに過ぎません。

そう考えるならば五胡十六国時代、南北朝時代と誤認する可能性があります。

例を挙げれば

中国で言えば劉備が建国した「蜀」の正式名称は「」です。

「前漢」「後漢」ももちろん正式には「」です。

五代の「後梁・後唐・後晋・後漢・後周」だって、本来ならば「」はつきません。

 

ヨーロッパでは「西ローマ帝国」「東ローマ帝国」がそう。

両方「ローマ帝国」です。

「神聖ローマ帝国」は建国時には存在しません。

魏を誤認するというならば

センターの問題文は、上記挙げたような例に対する配慮がしっかりなされているでしょうか。

私には「全く配慮がなされていない」ように見えます。

 

教科書以外の知識は要らない」という姿勢なら別ですが、センターがそれでは自発的学習やアクティブラーニングが広まるはずありません。

センターやセンターに代わる新テストは、各私大が実施している入学試験のようにもっと繊細に問題文を作成する必要があるように思います。

ミスの原因は

大胆かつ大雑把な指定語〔下線部〕と問題文」

何世紀など限定が全く無く、時代・地域バラバラな選択肢」

教科書記述に対する甘え

があると思います。

 

今回でいうと、下線部は「支配体制」・問題文は「制度や政策について」で選択肢には「」のみです。

仮に最低限、選択肢だけでも「三世紀の魏で,屯田制が実施された」としておけば、もしくは選択肢が時代・地域バラバラではなくて、せめて時代だけでも三世紀に限定した問題であったら、このミスは防げたでしょう。

 

もし山川出版詳説世界史Bの記述が「魏の屯田制〔脚注:国家が耕作者の集団をおいて,官有地を耕作させる制度〕,晋の占田・課田法や北魏の均田制などは,」のみでは無かったならば,作問者が気付くチャンスになったかも知れません。

無論ですが、

定期考査でミスをする私のように「作問者の能力が低い」のではなく、センターの作問者は超がつくほど優秀です。

ただ制約が多すぎるのです。

 

一回限りしかないテストで、生徒の学習内容が必ずしも同じとは言えないのがセンターです。

時代・地域に偏りがあればそれこそクレームの嵐でしょうし、このような奇妙な問題になるのも無理はないと思うのですが・・・

 

せめて私大のように複数回テストがあれば違うのでしょうが、それも早々にお流れになってしまいましたしね。

今回のテストに限ってでも

大問2の問4は下線部「覇権国」・問題文は「国家間の争いについて」

選択肢2

スペインやポルトガルが,アジアやアメリカ大陸への進出を競った。

などは、強弁すれば「何世紀のスペインとポルトガルですか?」との疑問が起きないでしょうか。

「屯田と魏」で3世紀の曹魏と限定できないならば、どうして「国家間の争いとアジア・アメリカ」だけで15世紀後半から16世紀前半にかけのてスペイン・ポルトガルと限定できるのか、「20世紀の両国は競っていません」と判断する生徒が居ないと言い切れるのか、私には全く解りません。

過去には

いつの出題か忘れましたが、「唐・宋代のできごとを選べ」の選択肢に「蘇軾の名文家がでた」というものがありました。

少し歴史を知る者にとっては、蘇軾は唐宋八大家の一人であり北宋代と即座に限定できます。

が「名文家の蘇軾」なのです。

省略されている名文家は、本当に蘇轍や蘇洵でしょうか。

違う人物ならば特定不可能です。

 

時代を特定する問題に「」は適切でしょうか。

いくら山川出版詳説世界史Bの記述が「宋代にも欧陽脩・蘇軾らの名文家」であるとはいえ・・・

今回のミスを

「全員に2点加点でよかった」「これはミスで当然だ」などの意見をネットででみかけます。

 

私には、それほど単純な話とは思えません。

確かに出題ミスを認めるのは大事なことです。

 

ですが、上に挙げた通り「潜在的なミス」は毎年多数存在していると思います。

今回は目立ったものを訂正しただけに過ぎないのでは、と考えます。

 

根本的に慢性的な「ミス」の要因を早急に解決すべきではないか、と思っていますし要望したいです。

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